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【SHIROBAKOの】制作進行は偉大【あんたが主役】

世の全てのアニメを支える「制作進行」の話です

 

SHIROBAKO 第3巻 (初回生産限定版) [Blu-ray]

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最新23話を見た、素晴らしかった…。つくづく最高のアニメーションだ、これを作ってくれている全ての人に感謝したい。次で最終回、ストーリーの盛り上がりも極まっている。前期ももちろん素晴らしい出来だった(ラスト12話は特に胸熱)が、とりわけ16話の安原さんエンゼル体操&小笠原ホームラン回以降は神回しか存在せず、私は心をひっ掴まれてぐるんぐるんぶん回されながら毎週毎話楽しみに見ている。もしまだ見ていない人がいるなら全力でオススメします、まだ最終回の放送にも間に合うし。dアニメストアで全部見られるよ!

 

アニメーション制作の今を描くというコピー通り各セクションを生々しい描写で掘り下げているけれど、どのセクションを描くのがメインテーマなのかはハッキリと伝わります。主人公宮森あおいの「制作進行」です。

 

以下一応ネタバレ注意ですが、それほどネタバレが意味を持つ作品ではないです。

 

 

あらすじ

高校のアニメーション同好会で自主制作アニメーションを作り文化祭で上映した女の子5人が、「絶対にこの5人でもう一度アニメを作ろう!」と約束し、それぞれの得意分野でアニメ関係の職業(制作、作画、声優、3D、脚本)に就き(一人はまだ大学生だが)、なんやかんや苦難を乗り越えていく、というのが物語の軸となる。実際はその5人に限らずアニメに関わる多くの人達のドラマが描かれる、非常に肌理の細かい群像劇である。

 

描かれる人間が複雑&具体的

「肌理が細かい」というのは、登場人物の造形、言動がいちいち妙に具体的で人間臭いのを指します。顔つきも必ずしも美形とは限らない、と書こうと思ったがここは強烈に男女差があるな! 女性は皆美形だ。男性は美形も少数居るが殆んどはそうではない。腹が出てたり歯が欠けてたり髪の生え際が後退してたり皆個性的で見ていて楽しい、まあここは監督が男性だから仕方ないのかも。女性監督版SHIROBAKOもいつか見てみたい。きっと全員具体的なモデルが居るんだろうな…と感じるし実際そのようだ

 

その他諸々美点

悪ふざけ要素満載

 本記事最初に書いた、16話の安原ダンスと小笠原打法をテレビで生で見た時の感動を忘れることは無いだろう。その他もパロディ的要素や実在の人物での遊びがてんこ盛りで飽きが来ない。水島努監督らしい

毎回毎回のぐっとくる引き

 「アニメを作るアニメ」よろしく、ひとまとまりのエピソードの締めには武蔵野アニメーションが死力を尽くして創り上げた成果物としての素晴らしい「アニメーション」を挟み込んでくる。それぞれ数秒からせいぜい数十秒程度ながらもこれが作品の緊張感を格段に引き上げている。このほんのワンシーンを作るためにこれだけのドラマがあったのか…! と思わず唸ってしまう。これ以降に見る他アニメの見方も影響を受けざるを得ない。

何の意味もないカットの充実

 13話の監督とみゃーもりの「ウィンウィーン」とか14話の子安の「なんで俺の意見もだっ…(何故か噛む)誰も聞いてくれねえんだよ!」とか15話の久乃木さんの「かんとく…そで…虫…」とかメインストーリー上の意味は皆無だろうけどこういう細かくて納得度の高い芝居が挟まるとホントほっとする、孤独のグルメ風に言うとおしんこ的な存在というか(分かれ)

 

ちなみに私は興津さんと安原さんが大好きです、どう好きかというと性的な意味で好きです。

 

こうした様々なこだわりにも見られるように、まず基本的にエンターテイメントとして非常に質が高く、安心して楽しく見られる作品です。あらすじで描いた通り、物語の軸は主人公5人組が自分たちのアニメを作ることですが、24話までにそこまで描かれることは無さそうです、たとえ描かれたとしてもダイジェストで、という形になるでしょう(是非2期でじっくりやってくれ頼む)。というのも主人公5人組全員が新人なので、それぞれのキャリア初期段階の苦悩にスポットが当てられており物語がそこまでは進まないのです。そして枕でも書いたようにこの1期(1期と呼びます)24話のテーマは主人公みゃーもりのアニメーション制作における役割「制作進行」を描くことにあります。

 

「制作進行」とはなんぞや?

あらかじめ断っておくと私はアニメ作りの現場の仕組みについては疎く、制作進行(略称:制作)という仕事もSHIROBAKOを見て初めて知りました。監督や演出や原画や作画監督や声優などは何となく分かる。撮影、色指定、動画とかになると怪しい、制作進行と言われてもさっぱり分からない…。恥ずかしながらこんなレベルです。なので今「制作進行」でググって記事を幾つか読んだだけで若干クラっときました。アニメ制作の全ての工程に関わる調整役らしく、肉体的精神的に非常にしんどい激務とのこと。

 

SHIROBAKOを見始めた頃はとにかく主人公の宮森(愛称:みゃーもり)がぶつかるトラブルを見ては一緒に胃を痛くしていました。アニメには基本的に脳を溶かすためのカワイイ成分あるいは笑いを求めて見ているのではじめは「なんで仕事で疲れて帰宅して見るアニメで更に疲れなければいけないんだ…」と思いながら見ていました、作中で描かれる女の子がひたすら可愛くなかったら1話だって通して見ることは出来なかったでしょう。飼いならされている

 

こうしたカワイイ女の子のクッションがあるにも関わらずこちらは見ているだけでもしんどいのに実際の現場はどれだけしんどいんでしょうね、想像を絶する。劇中では主人公に限らず多くの制作進行が登場します。アタマのネジが3、4本抜けてるけど憎めない魅力のある大器晩成型新人タロー。いつも頼りになる少し年上の先輩、世界一ランドセルが似合うOL矢野さん。寡黙で有能、早々に大手プロダクションにヘッドハンティングされて武蔵野アニメーションを去る(円満退社)落合。勤務時間の殆んどは雀荘で過ごすもデカイ仕事をサラッと取って来ては会社に貢献する元・制作進行のラインプロデューサー渡辺さん。 前期ではデスクとして制作進行を指揮するも(「万策尽きたー!」は前期を象徴する名台詞)途中でかねてからの夢のためにケーキ屋に転職する本田さん。後期から入社し、かつてはアニメ制作の仕事に大きな夢を抱くも過酷で理不尽な現場を体験するうちにすっかりその夢を枯らしてしまい、今やその雑な仕事ぶりからトラブルの種となってしまうベテラン平岡。いつもニコニコ美味しい食事を差し入れてくれる、元制作の丸川社長。また、劇中で制作される作品2つ「えくそだすっ!」「第三飛行少女隊」を手がける木下誠一監督も制作出身とのこと。作画陣、あるいは声優陣等もわりあい個性豊かに描かれますが、制作進行スタッフの描写は全職種中でも群を抜いてヴァリエーション豊かで分厚いです。

 

人肉サンドバックとしての制作

SHIROBAKOでは上にあるように多種多様な制作進行の仕事ぶりが見られます。しかし彼女・彼らは基本的にはあくまで各部署の間を取り持つ調整役です。たとえ「良いアニメーションを締め切り内に作る」という大目標を全員が共有していたとしても仕事をするのは人間です、当然利害は対立するし、良いものを作るために自分の部署の仕事により多くの時間をかけたいと思うのは当然でしょう。そうした部署間の微妙なバランスを取りつつ適切に納期を割り振り、あちらこちらに頭を下げ、最終的に作品を完成まで持っていくのが制作進行の仕事、のようです。

 

ベテラン制作進行の平岡がかつて抱いた夢を失っていったように、非常に過酷な職業だと思います。自分ではシナリオを書くわけでも、絵を書くわけでも、声を吹き込む訳でもない。つまり自分が何かを「創造している」という感覚や手応えが稀薄になりやすい、というのもその辛さに拍車をかけているでしょう。更に、監督やプロデューサーにでもならない限りその仕事が日の目を浴びることはない。少なくとも私のようなド素人はこの作品以前には「制作進行」を知らなかった。

 

あんたが主役

それでも、この作品を見た人ならば主人公の宮森がどれだけいい仕事をしてきたかを知っています。彼女は間違いなく彼女にしか出来ない仕事で価値を創造している。彼女はシナリオも絵も書かない、声も吹き込まない。でもその知恵と勇気とド根性で超一流の背景職人・大倉に絵を書かせ、引退間近のベテラン原画マン・杉江の力を引き出し、エヴァの監督の家にも押しかける。偉大な制作進行は不可能を可能にする。23話では上記の制作進行たちの頑張りが少しずつタスキみたいに繋がって、木下誠一監督が作中最高の働きを魅せつける。

 

みゃーもりは最初期からずっと「自分には何が出来るんだろう?」と、制作としての自分の意義を問い続けていた。それが終盤になって自身が制作しているアニメのヒロイン・アリアの「自分にはやりたいことなんてない、でも皆がやりたいことがあるのなら、それを援護することは出来る」という悟りに自らの境遇を重ね、活路を見出す。23話ではそこから更に大分先に進んでいるようにも見える。

 

後期から登場の新人制作進行・佐藤さんが21話の一幕で「間に合わせるように頑張るのは私達ではなく、作画さんをはじめ現場のスタッフさんたちですよね? 私はただ皆さんが頑張るために頑張るだけ、というか…」と漏らしており、それを主人公のみゃーもりは若干意外そうな表情で見つめます。もちろんその通りなんだけど、この仕事は決してそれだけでもないよ、ということを身に沁みて理解している、そんなことを伺わせるいい芝居でした。その後にサンジョ第一話オンエアを興奮気味に見終えた佐藤さん含め新人制作を嬉しそうに見つめるみゃーもりも非常にグッドだ

 

まとめ:少し「アニメ」が好きになったよ。

これまで沢山の素晴らしいアニメーション作品を見てきました。でも私にとってそれはあくまで「その作品が好き」 なのであって、アニメーション文化そのものが好きかというと答えに困るものでした。なんといってもハズレが多い。漫画は文化そのものが好きです。でもアニメは、そんな大好きな漫画原作の輝きを台無しにするような酷いものを子供時分から度々見ていたのもあり、「あまり信用していない」というのが正直なところです。今でもクソみたいなアニメは沢山あるし、これからもクソみたいなアニメは一定量作られ続けるんでしょう。でもこのSHIROBAKOをずーっと見ているうちに「アニメも人が作ってるんだな」と感じるようになりました。これからはもう少し寛容なこころでアニメを見られると思うし、この分野から更に面白いものが生まれることを期待しています。ピーエーワークスは大きな仕事をした。来週で最後かと思うととても寂しい。

 

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最終話を前にした私