もこっちのモテっぷりには納得しか無い【わたモテ感想その1】

 

ネタバレはほぼ無しのわたモテ感想です。

 

1、きっかけはクリロナ 

 

私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(以下「わたモテ」)の面白さが常軌を逸している。この「面白い」はカルト的な、狭い範囲のオタクに向けた面白さ、ではない。この作品を寄生獣ベルセルクなどと並び称する人がいたとしても驚かないし、もし自分が中学生だったら卒業文集の尊敬する人の欄に「黒木智子」と書いていたかも知れない。そういうレベルの作品だ。

 

私がわたモテを1巻から読み始めたのは今年の8月末。ガンガンオンラインで最新話を追うようになったのは7月初旬の加藤さんクリロナ回(喪137)からだが、この時は最新話をサラッと読んだだけなので当然その複雑すぎる人間関係を全く理解できず、面白いもつまらないも無かった(クリスティアーノ・ロナウドのことは別に好きではないが強くリスペクトしている〈はねバド理論〉ので、Twitterで話題になっていたのを見て気になり読み始めた。性格がめちゃ良い人間の言動がクリロナに似てくるというのが納得度高いしクソ笑える)。そうして数話ほど最新話だけを読んではモヤモヤを積み重ね、ついに我慢できず1巻に手を付けた。2〜3日ほどで13巻まで一気に読了した、信じられない体験だった。こんなに面白い漫画が存在して良いのだろうか?

 

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尊敬せざるを得ない

  

隙あらば腹筋を見せつけてくる変態天才サッカープレーヤー

 

 

 

2、何故これまで読まなかったのか

 

1年位前からネット上で「わたモテが面白い」という噂をポツポツと聞いてはいた。聞いてはいたが、正直あまりまともに受け止めてはいなかった。なぜなら、5年前に見た(or読んだ)わたモテのアニメと原作をあまり楽しめなかったからだ。「男オタク(作者)が自分の暗黒面を架空の女オタクぼっちに仮託した痛々しいギャグ作品」という程度の認識しかなかった(作者の谷川ニコ先生は原作男性で作画女性の2人組なのだが、5年前はそれすら知らなかった)。 そしてそのぼっち自虐芸(?)も真に迫りすぎていてあまりに心臓に悪いというか、見ていて面白さよりも辛さが勝っていた。何よりも「極々限られた層だけに向けた作品」という印象を強く受けたので、原作漫画が方針変換に成功してめちゃ面白くなった、という評判を聞いてもなかなかそれを信用できなかったのだ。

 

そうした頑固な思い込みがあったにもかかわらず今になって読む気になったのは上記のクリロナ回の噂と(クリロナは偉大なので)、あとは『喧嘩稼業』との類似の指摘だ。喧嘩稼業も現代最高の漫画の一つだが、同じく喧嘩稼業にどっぷりハマっている漫画読み達がこぞって絶賛しているのを見て、ただごとではない、と感じた。喧嘩稼業と似ている百合ハーレム漫画? なんだそれは、そんなの俺は知らない。そもそもあの漫画に百合ハーレムになる可能性なんてあったっけ? 気になる、この5年で一体何があったんだ。。。こんな流れで陥落しました。 喧嘩稼業が好きならわたモテを読もう! 

 

 

 

 

 

3、「世界の全て」を描くことを志向している

 

わたモテに描かれているのは、ほんの少し(ほんの少しです)自意識過剰で人付き合いが苦手な女の子、黒木智子ちゃんの高校三年間の人間関係だ。黒木智子という一人の女の子が、自分のコミュ障ぶりに悪戦苦闘しながら、血を吐くような苦しみを通して(7巻までのエピソードのほぼ全てが読むだけでこっちも死にたくなるような失敗談オンリー)人間関係を構築し、少しずつ楽しい高校生活を送れるようになっていく。

 

一人の女子高生の人間関係、そんなパーソナルに過ぎるテーマの作品を寄生獣ベルセルクを引き合いに出して評するなんて大げさでは? という意見もあるかも知れません。でもわたモテを読んだ時の感動のデカさってそうした歴史に残る傑作に匹敵するんだよな。根拠としてはそれしか無いんだけど、それで十分とも言える。考えてみれば人間関係うまくいっていない人間が少しずつ少しずつ上手くやっていけるようになる、これ以上に共感できてかつ壮大なストーリーってあるか? 超ど真ん中ストレート普遍的な物語もいいところでは? 一見些細なこのテーマが普遍性を持つこと、そしてこの黒木智子という女の子を通してそれを描くことが出来ると気づいたこと、実際に真正面から描ききっていること。谷川ニコ先生の手腕には尊敬の念しかない。天才ですよ。 いつもエグい下ネタで話を締めてくれるところも信頼できる。

 

 

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何のことでしょうね

 

 

4、横着せず1巻から読もう

 

これからわたモテを読み始める人に対して、「1〜7巻は人によっては読むのが辛いだろうから、本格的に人間関係が動き出す8巻から読むのが無難」という勧め方をよく目にする。実際7巻まではマジで読んでるこちらもしんどいエピソードのオンパレードなのでその勧め方にも一理ある。でも、せっかくなら俺は1巻から読む方が贅沢な体験だと思うな。まずはガンガンオンラインで公開されている最新2話を読んで、もこっちの充実した姿を見て最低限の安心ポイントを貯める。その上で1巻にダイブ。7巻までもこっちにとっては試練の連続ですが、その苦しみはすべて最新話につながっている。大丈夫大丈夫、ギャグもキレッキレで案外、というかめちゃ楽しく読めるから。それでも駄目そうなら8巻にワープして読めばいいじゃない。

 

どうして最初から読むことを強く勧めるかというと、そうした方が後々の感動がデカイからです。あまり詳しく書くともったいないのでぼんやりした書き方になりますが、ひとつの総決算になる12巻でそれを実感できると思う。 ぜひ読んで確かめてくだされ。

 

 

  

 

5、もこっちモテのリアリティについて

 

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ここからが本題ですが(遅い)、このエントリを書いていたらちょうどTwitterで上の記事が流れてきたので読みました。2013年1月、かなり昔の記事で、今のもこっちモテモテ展開を見た後ではなんとも興味深い。

 

よくマンガで「モテない」と言いながら、なんだかんだいって、同性にも異性にも「モテてる」キャラクターっているじゃないですか。嫌いなんですよ、そういうの。

 

過去にこうまで語っていた谷川ニコ先生にどういう心境の変化があったかは分からないが、俺は「もこっちのリア充化には特に不自然さを感じなかった」。なんで自然に感じられたのかなーと振り返って考えてみると、その理由は1〜7巻で散々もこっちのクズさ加減を見せられてきたから、となる(?)。何を言っているか分からないと思うが、俺も(以下略)

 

いや、ホント何言ってんだという話なんだが、これは正直な感想だ。連載期間にして約4年間分、あれだけひどいエピソードの宝庫を見せつけられたら、どれだけモテにモテても納得できるんだよな。喧嘩稼業のひどい下ネタが感動エピソードの説得力を支えているのと全く同じ理屈だ。ほら真面目な人が真面目なこと話してても胡散臭いだけじゃないですか(偏見)。真逆の性質を併せ持っているからこそ耳を傾けようという気になる。芝原剛盛も「光と影を行き来できる者が一番強い」って言っているしな。積もり積もったクズエピソードの全てが、今のもこっちモテを支える理由として立ち上がってくる。このことに何故谷川ニコ先生は気づけたんだ、天才としか言いようがない…

 

これは大概メタい話なので、物語の他の登場人物の視点からも考えてみる。その場合のもこっちの魅力は、何より正直であること、ちゃんとやろうとしても全くちゃんとやれてない隙だらけなところ、ちっちゃくてかわいいところ。あとはなんだかんだで「一人になることが出来る強さ」を感じるのかな。もこっち以外の他の多くのキャラクターも大なり小なり高校生活の中で人間関係が絡まってめんどくさいことになっており、もこっちの存在はその彼女らから見て鮮烈に映ったのではないか。

 

あとはやっぱりもこっちが「モテることを諦めなかった」からかな。「諦めたらそこで試合終了」とは言うものの、言うは易し行うは難しで、何度チャレンジしても常に失敗してしまうならば諦めてしまっても不思議ではないですよ。それでももこっちは諦めなかった。エントリ冒頭でもこっちを尊敬すると書いた理由はやっぱりこの不屈の精神力です(勿論これは彼女の超良好な家族関係や、周りの人間の優しさによって支えられている訳だけど)。これがあるから実際にモテるようになったら見ててこっちも嬉しいし、応援したくなる。こうした諸々の相乗効果で、もこっちの人生が楽しく幸せになっていくことを自然に受け入れられる。百合ハーレムで人気をV字回復させた本作だけど、もこっちは一貫して異性愛者だし、これからはきっと男にもどんどんモテていくんでしょうね。

 

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黒木智子は諦めない

 

 

6、吉田さん

 

最後に、私が特に好きなのは吉田さんです。吉田さんはかわいい、とにかくかわいい…… ヤンキーなのに隠しきれない育ちの良さ…… そこそこ(多分)の進学校に通える程度の学力…… 性知識が小学生レベル…… 最高……(語彙が無)

 

吉田さんがいなければ、正確には吉田さんの乳首がもこっちにとってつまみやすい雰囲気を醸し出していなければ(事実)、現在に至るもこっち百合ハーレム王国は為らなかった、いわば建国の祖である。

 

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その時歴史が動いた

 

あと12巻での卒業式回でもこっちの手を引いた、あの、あのムーブがね……。彼女がいなければもこっちが人の優しさに気づく機会は無かったのかも知れない。物語を動かすパワーのある女だ。最近の更新ではこれからヤンキーグループとの絡みも増えていきそうな描写もあったし、ますます楽しみ。