田村ゆりは黒木智子に何を与えたのか【わたモテ感想その2】


布教記事その2です。ネタバレがあります。ちなみにネタバレ無しの布教記事その1は下のリンクからどうぞ。原作未読の人は恐れずに最新話から読め。

 

 

kanzo1984.hatenablog.com

 

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ゆりちゃんは何故特別なのか

 

 

わたモテに〈田村ゆり〉というキャラクターが居ます(愛称:ゆりちゃん)。アニメ一期でも存分に描かれていたぼっち自虐ギャグ漫画(これだって異様に面白い)から超王道青春群像劇(人によってはオールタイム・ベストになることも十分にありましょう)に脱皮した本作ですが、その革命的変化に最も貢献したキャラクターを一人だけ選べと言われたらきっと8割以上の人間に選ばれる、それくらい重要なキャラクターです。

 

 

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田村ゆり(花を土ごとぶち抜くのが世界一似合う女)

 

  

初登場はかなり遅く第8巻、かの名高い修学旅行編の直前です。しかし今やその存在感は主人公である黒木智子(愛称:もこっち)に次いで大きく、もこっちとゆりちゃんのやり取りはまさにわたモテという作品の「本線」「幹」「グランドストーリー」と感じさせる、それだけの格を持っています。これは私見ですがゆりちゃんが幸せにならないならばわたモテは完結できないとすら思います。

 


じゃあゆりちゃんの何が特別なのか、どこが他の人とは決定的に違うのか。私は「もこっちを自分の友達に紹介した」ことだと考えます。この行動がわたモテという作品を永遠に変えてしまった。

 

 

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分岐点



修学旅行の時も吉田さんとの仲をとりもったり、自由行動時に一人で徘徊しているもこっちを見つけ出して「それが当たり前のように」4人組に入れたりしてて、勿論もこっちもめちゃくちゃ嬉しそうでしたが、あれは修学旅行というハレの場でのことなので。やはり日常に帰ってきてからの上のシーンが明確なターニングポイントになります。このシーンが特別だということは多分誰にでも一目瞭然なのですが、その内実を長いこと言語化出来ずにいました。ご飯に誘った、それはそうなのだけど、じゃあそれってどういうことなの、と。

 

 

「もこっちの最初の友達になった」という意味では他にもゆうちゃんやこみなんとかさん、(その時点ではまだ)薄いつながりだけどネモ、少し年下で親戚だけどきーちゃんなど他にも割とたくさん居ます。でも、これら古参のキャラクター達はそこから先へ、自分の友達にもこっちを紹介するという人は一人もいなかった。人間関係はもこっちとその一人のところまでで閉じていた、広がりがなかったと思うんです。ネモなんかは特別編で明らかになった中学時代の苦い経験からか、もこっちとは多少話すことはあっても必要以上親密になること、仲の良さを周りに知られることを注意深く避けています。

 

 

ところがゆりちゃんが何のてらいもなくもこっちを真子さんとの昼食に誘ったり、吉田さんと一緒に声をかけたりすることで、人間関係が一気に広がっていった。これはわたモテという物語にとってビッグバン並のインパクトがありました。

 


当たり前のことですが、そもそも人を人に紹介するって決して軽いことでは無いです。もしも紹介した人間が何かやらかした場合、間に入った人間にも非常に大きい責任が発生するから。もちろん女子高生の友達の広がりなんて上のシーンにあるようにごくごく気軽なものだろうけど、でも根本的に「自分の信頼を預ける」点では大人だろうが子供だろうが何も違いはない。そしてこの時ゆりちゃんからもこっちに伝わるメタメッセージは「私は私の友達に紹介できるくらいあなたを信頼している」です。この信頼がもこっちにどれほど大きな影響を与えたか。もこっちがそれを自覚していたかは分かりませんが(多分してないっぽい)、他者から信頼されることほど人間を強くすることは他に無い(もちろん最初はゆりちゃんにとっても「悪い人では無い、一緒にいても疲れない」程度の好意だったとは思うけど)。

 

 

そしてこれを境にもこっちにはゆりちゃんに限らず吉田さんや真子さん、加藤さんやネモや岡田さんと、少しずつですが自然な友情を育んでいきます(うっちーはちょっとイレギュラーなのでここでは触れません)。これはもこっちがゆりちゃんから信頼されることで得た自信と、ゆりちゃんが一緒にごはんを食べたり登下校したり一緒にチョコを作ったりして「黒木さんは私の友達だ」と裏表なく無言で周囲に示し続けたからこそ広がっていった人間関係です。もこっちもゆりちゃんからの信頼や好意を少しずつ享受出来るようになって、チョコを受け取った時に明確に「こいつと私は友達なんだ」という自覚が芽生えたんでしょうね。愛じゃん……

 

 

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ラヴやんけ

 

 

 

アウトロ

このバレンタインイベントと二年目の卒業式をピークにゆりちゃんともこっちは少しずつすれ違うようになります。ネモや加藤さんも本格的に絡んできて一気に人間関係が複雑になっていき、それに伴いゆりちゃんのメンタルもどんどん不安定に。まだ書きたいことの3分の1くらいしか書けていないので機を見てまたいろいろ考えてみたい。「わたモテを語ることは田村ゆりを語ることである」という格言もあるくらいだし……(自分で作った)。今のところ以下のテーマに興味があります。

 

  • 田村ゆりと南さんについて
  • すれ違うゆりもこ、失われる表情筋
  • 「久しぶりに四人だ…」について
  • ゆりちゃんを救うのは根元陽菜

 

 

雑記

今日更新のわたモテ喪150も凄まじかったですね…… 毎回毎回漫画で読者を殺そうとするのはやめて欲しい(うそ、どんどん殺してくれ)