Himematsu in Avalanches(サークル「木と木と木」冬コミ新刊)感想

Himematsu in Avalanches


コミケ87に向けて、姫松高校の同人誌を作りました。(22日 追記) : 木と木と木

 

 

怪物やくよじのさんの新刊。姫松高校参謀・末原恭子さんと高火力おデコちゃん・上重漫ちゃんの関係性について。昨年2月に発表された愛宕姉妹ののっぴきならぬ対決本といい、「ふたり」をとことん掘り下げるのが好き、なのかも。

 

 

 

これがホントに素晴らしい本でして。徹底して傾いで歪んだ背景、鉄板にへばりつく擬音、手書き文字がもはやそのまま作品レベル、と表現効果だけでも類を見ない楽しさな訳ですが、それが作品の攻撃力に直結していると言いますか。読んでるこっちにズガンと来て、とても落ち着いては読めない訳です、ざわざわする。あと今回は目の書き方を大分変えてこられたなーと思いました。より怖くなった。また、単純に絵が上手い。どんな角度からでも自然に描かれる人体、特に斜め上や斜め下から眺めたそれを見ると特にそう思います。こうしたやくよじのさんの漫画描きとしての表現力は商業同人問わず非常に高い次元で逸脱しており、同時代に読むことができてまっこと僥倖です。

 

そして、やくよじのさんがその最高の筆で何を書いているのか、俺には未だによく測れんのです。とても巨大なものを描いているのは分かる。しかしそれがなんなのか、つかめない。デビュー作「姫松 in Sister's Body」でも、特にラストの洋榎ちゃんの表情でも強く感じたのですが。ままならないものを、ままならないまま描く、描いてしまえるというか。しかし前作を読み直してみると今作で更にめちゃくちゃ上手くなってるな…。

 

これらの作品では、読者はやくよじのさんの「咲-Saki-の読み方」を叩きつけられている。もちろん私も存分に楽しく咲-Saki-を読んでいる自負はあります。でもこんな豊かな読み方もあるのか、と思い知らされます。それもほんの少し窺い知れる、という程度ですが。

 

何回も読むわけです。分からないから、シンプルに面白いから。あとは、やっぱりほんの少しの自由を分けてもらえるから。

 

 

※記事を書き始めたときには冬コミで購入した同人誌を20冊ほど取り上げて万遍無い寸評を載せようと思ったのですが、一冊目のやくよじのさんで思いのほか筆が乗ってしまったのでこんな記事になりました。他の感想はまた別にアップする予定です