読むと悶え死ぬ / 宮原るり『僕らはみんな河合荘』『恋愛ラボ』『みそララ』感想

宮原るりさんの漫画が面白い。

 

みそララ (6) (まんがタイムコミックス)

みそララ (6) (まんがタイムコミックス)

 

 

この間なつめさんとご飯食べながら今期のアニメについて「『恋愛ラボ』がちょっと訳分からんくらい面白い」という話になった。俺は10作品も観ていないのでサンプルが少ないが、彼は1クール辺り優に30本とか観ており、その中でも抜きん出て面白い、とのこと。セリフ回しとかを聞いているときっと原作も面白いんだろうなあ、漫画読まんとな…と言ったらなつめさんが同作者の別作品『僕らはみんな河合荘』を持っていた。そういえばちょっと前にMK2さんが読んで「死んだ」って言っていたな。読んだら死ぬ漫画ってなんだ。不思議に思ったが早速貸してもらって読んでみたところ、俺も無事死亡した。

 

僕らはみんな河合荘 

高校一年生の主人公・宇佐くんが、やたらとキャラが濃い人ばかりが集まる「河合荘」という下宿に入って過ごす日常を描いたもの。下宿に入る初日にルームメイトのキツ目の変態ぶりに嫌気が差して出ていこうとしたところ、ほのかに思いを寄せていた同じ高校の先輩・河合律がその下宿に住んでいることを知り、出て行くのを思いとどまる…というところから話が始まる。ああ青春って素晴らしい。読んでいる方は悶え死ぬがな。

 

だいたいがおっさん臭漂う(作者の宮原さんは自身の中に「おっさんを飼ってる」と自己申告している)下ネタ中心のギャグで話が進んでいくが、この作品の少なくとも半分はヒロイン律ちゃんの可愛さで出来ている。この可愛さはちょっとただごとではない。もう訳が分からない。

 

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河合律(ぐうかわ)

 

無愛想、無口、でも話が出来ないってわけではない、基本無表情、たまに笑う、その笑顔が破壊的可愛さ、結構暴力的、本の虫、本を読んでいると音が聞こえなくなり物騒極まりない、好きな本の話をする相手を求めている、黒髪ショート、髪が綺麗、清楚、目がしっかりしている、赤面、つよそう、めんどくさい…と悶え要素を並べれば軽く3ダースには達する程いろいろとぶち込んだキャラですがこれがほんと可愛いんだ。まあこうして要素を列挙してもあんまり意味はないんですけどね。キャラクターの実在感はそれとはまた別だから。そこは作者の宮原さんの豪腕の為せる業だと思う。

 

キャラ造形の妙としては河合荘の他の住人もいい味を出しまくっていて、彼らも十分に主役を張れそうなほど濃い目の方ばかりです。「吸引力の変わらないダメ男掃除機」ことアラサー巨乳女子錦野麻弓、男を見たらとりあえずコナをかけずには居られない無敵のサークルクラッシャー20歳の大学生渡辺彩花、肉体的精神的なあらゆる苦痛を快感に変換する最強のM男のシロさん、そんな彼らを生暖かく見守る河合荘の主、住子さん。例えば彩花とかクソ女もいいところなんだけど、何か憎めないんだよね。律ちゃんも彩花をして「こんなに性格が悪いのにあんないい友だちがいてずるい」とか言うくらい、まあ何か魅力的なんですよ。

 

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彩花(化粧後)

 

また、ラブコメはメインのカップルがくっついた時点で物語を引っ張る力を失うことを考えれば、この作品を回しているMVPは何と言っても麻弓さんでしょう。「リア充爆発しろ」を言葉だけでなく常に実践しており、その嫉妬力には非常に好感が持てます。主人公とヒロインがいい感じになると必ずそれをぶち壊して程よいギャグに整地してくれます。律ちゃんは別枠として一番好きなキャラです。

 

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麻弓(ダメ男掃除機)

 

シロさんはそのM属性で全ての笑いを自動的にもう一段階落としてくれるのでそのキャラとしてのお得っぷりに毎度驚愕しています。

 

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右下がシロさん(ブレのない変態)

 

そんなちょっとアレな面々が織り成すコメディをベースに律ちゃんの可愛さを楽しむのがこの漫画の醍醐味です。赤面を描かせたら宮原るりは日本一。

 

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ああかわいいなもう!

 

恋愛ラボ

続けてアニメで好評放送中の恋愛ラボの原作もチェックしてみました。とりあえずはアニメで進んだ所までだけ、と思いまずは3巻くらいまで読んでみた。しかしダメだね、なんかアニメで見た話の確認作業みたいになってしまって。どうにも予断が入りまくりできちんと楽しめなかった。なのでアニメの進行は無視して出ているところまで全部読むことに。これが河合荘に続いて大当り。特に6、7巻あたりで死にそうになった。恋愛ラボは男子が出るからこそ面白いんだ、という話をポツポツ聞いていたがその理由がよく分かった。なんといっても男子が絡んだ時の方がヒロインたちがより可愛くなるのだ。

 

 

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赤面リコ(ぐうかわ)

 

リコがぶっちぎりで一番好みです。

 

みそララ

2作連続大当りだったので迷うこと無く『みそララ』にも手を伸ばす。作者のライター経験をダイレクトに活かしたお仕事漫画で「あるある」と頷きながらこれまた一気に読んだ。仕事の楽しい面や苦しい面、信じられないミスをしてしまった時の頭真っ白になる感じなどもまあリアルに描かれていてこれも読んでて「うわあああああああ」となる。上記2作とはまた違った意味で殺傷力高めである。5巻でカジさんが主人公を叱るシーンなど何回読んでも「うあああああああ」となるし、ここのセリフちょっと頭から離れない。勉強になる&俺もいい仕事しようという気分になる。高津カリノWORKING!!』などとは違い本当に仕事の話をかなりがっつり書いている印象だ。ちなみに宮原さんは高津カリノ作品大好きとのこと。言われてみれば作品のテイストが似ている気がしないでもない…。真面目な話でもどこかに必ずコメディを挟んでくれるので安心して読めるところとか。がはこ(高津カリノの愛称)の作品で笑いが無いときとかマジで不安になるもんなあ。

 

全作品通しての感想ですが、細かいところで作者の倫理観が垣間見れて面白い。

<ネタバレ>

恋愛ラボ4巻でリコがマキに謝る時(自分は恋愛の達人だと嘘をつき続けていた)に危うく土下座しかけて、「土下座なんてしたら卑怯だ、マキの性格なら許すしか無いじゃないか」と思いとどまったり。また、みそララ5巻では主人公が仕事でいわゆる「抱え込み失敗」をかましてしまい、そのミスをカジさんがカバーしているのを見て泣きそうになるんですが、そこで「だめだ こらえろ この失敗を 涙でごまかすな」と必死でこらえたり。そのすぐ後に主人公がそのミスをリカバーする意気込みを「命がけでやります!」というところをカジさんが「そこまではいい」とたしなめたり。こうした事はくどくどとは語られず、描写はあくまでサラッとしたものだけど、作家にとって深く自然に根付いている倫理観なんだろうなーと思えて却って興味深いです。30歳過ぎて漫画家としてデビューする前はライターだったとかそうしたバックグラウンドを聞くとより納得なのですが、何というか考え方が開かれてるな、と感じる。バッファがあるというか、柔軟というか、余裕があるというか。嫌なやつとでも上手くやっていけたらそれに越したことは無いという姿勢だったりとか。それは河合荘の彩花が魅力的な女性としても描かれたり、または3巻で一度仲違いしたかに見えた律のクラスメイトと4巻では違ったかたちでの繋がりを再構築するところからなども窺えます。3巻のその律のクラスメイトとのトラブルの後に麻弓さんが「そいつの言うとおり《合わなかった》それだけだよ」というセリフも。なんつーか律にとっては一方的な被害者に落ち込める場面でもあるわけですよ。でもこの麻弓さんのセリフのお陰でそうしたパセティックな味が薄れて、じゃあ現実的にどうすんの、という方向に変わっていく。いやマジで試合終了した後も人生は終わってくれませんからね。なんとかするしか無い。

〈/ネタバレ〉

 

3作品まとめてのざっくりにも程がある感想ですがとにかくこの作家は凄い、もう何を書いても面白いに違いないとの確信と信頼を持つに至ったのでなんか嬉しくて記事にしました。とりあえず今は来週のアニメ恋愛ラボ最終話を楽しみに待ちます。